家に帰ると怒られる
「家に帰ると怒られる」
許してもらうまでの苦痛と、放っておかれる孤独を何度も味わった私は、家に帰ることが大嫌いになっていった。
父が帰ってくるまでの、母と弟との時間が恐ろしかったのだ。
祖父母の家が近くにあり、母は昼間仕事に行っていたため、私は保育園から祖父母の家に一旦帰っていた。
祖父母は優しい。怒りはするが、外に出すという事はしない。
家に安心感を感じられなくなった私は、母親が迎えに来ると「祖父母の家に泊まる」と泣いて駄々をこねた。
母はそれがまた面白くなかったに違いない。
おかげで、無理矢理家に連れて帰られることはなく、私はその日一晩の安心を手に入れることができたのだった。
寝るときは祖父の隣で寝た。
祖父は寝るときに必ず「ももたろう」の話をしてくれた。
毎回「ももたろう」だったが、私はそれが好きだった。
ここはいてもいい場所。安心して居られる場所。
やっぱり素直に「ごめんなさい」は言えなかったと思うが、
多分あってもなくても許してもらえたのだ。
そうして、母のところは、私が気持ちを吐き出せない場所になっていく。